連載3 『アジア解放戦争』―大いなる自由を求めて

アジア解放戦争』―大いなる自由を求めて、坂本流摩―　
【連載小説・あらすじ編】連載3

【焦る、坂本流摩】

大杉栄達首相と深夜に及ぶ会談を経た龍摩は、

国の支援を取り付けることに一抹の不安を隠せないで居た。

大杉首相の心情を理解しつつも、二つ返事での回答がなかった事に。

大杉個人としてはあるゆる手段を労しても支援をすると約束を取り付けたが

国家として対欧米戦には踏み切る回答の判断には

後、一月の猶予がほしいとの回答に留まっていた。

ある意味、首相が妄信していないことに安堵感を覚える程であったが

ひしひしと迫る、欧米列強の対日植民地計画の実行に焦りを隠せなかった。

　
翌日、国家治安部隊の総師である中原中将と会談した

盟友山本悟らと会合を麹町の居酒屋で開くが、

山本に拠ると中原中将も坂本と全くの同意見であり

危機迫る思いで国家治安戦略参謀本部との密約を取り付ける

旨の了承を流摩に報告をした。

中原中将曰く、先ずは、国家治安戦略参謀本部の西園寺統帥を

納得させて見方に引き込む事が慣用とし、彼の人望をフルに活用し

その他の陸軍の反発を防ぐ事とした。

次に、今回のアジア解放戦争の主力となる筈の海軍と交渉に踏み切る事に。

海軍が一番恐れている事は、陸軍の暴走であり

冷静な判断と機知で対欧米戦に挑まなければ

1％の勝利の可能性がない事を知り尽くしていた。また、

米国の国力および戦力を冷静な判断と分析をしている事に

中原中将が一番良く知っていたからである。

幸い、陸軍は西園寺総帥の説得に膝を屈し、

今回の戦いは海軍主体での開戦とし、陸軍はあくまで海軍の補佐的な

役割に徹する了解を取り付けた。

また、その報告を受けた海軍大臣である毛利武の内密の

了承を取り付ける事に成功した。

会談には、海軍を代表して海の申し子と呼ばれた

吉川博正中将が出席し、坂本の構想に耳を傾けた。

時に、大杉栄達首相の回答まで後3日。

坂本の構想とは、日本が独立を維持し助かるには

アジア諸国が独立しアジアが挙党体制で

欧米に対抗するしか、手立てがない事を説いた。

真の『大東亜共栄圏』の構想である。

先ず、中国と朝鮮国との同盟を計り、ゲリラ戦を展開し

ロシアをはじめとする列強をモンゴルまで押し返す。

と同時に、台湾、ベトナム、タイ、フィリピン方面の

米国、フランス、イギリスを徹底的に叩き敗北させる。

そのためにも、台湾、ベトナム、タイ、フィリピン諸国との

同盟を取り付け、国家としての独立援助を日本国が執り行う

約束をすることが第一と主張した。

そして、東南アジア連合を持って、中国・朝鮮を支援すべく

欧米列強に本戦を挑む事とする。

問題は、大杉栄達首相の声明文が必要であった。

3日が経過した。

大杉首相からの回答を得るため

坂本流摩は首相官邸に足を運んだ。

大杉の赴きは無表情であり沈黙が暫く続いたが

思いがけない言葉が大杉の口からこぼれた。

「坂本君、偽装クーデーターをやろうじゃないか？」

続く