連載2 『アジア解放戦争』―大いなる自由を求めて [小説[あらすじ篇]]
アジア解放戦争』―大いなる自由を求めて、坂本流摩―
【連載小説・あらすじ編】連載2
【坂本流摩、上京】
一か月の遊覧の後、流摩は上京する。
時は一刻もの猶予が無くなっていたころであった。
上京した坂本は政府高官に勧められ帝国開成所に入学するが肌が合わず、翌年には退学することとなる。政府高官は失望の色を隠せないでいたが、上司から丁重に接することと言明されていることのみに従事し個人的な感情を押し隠していた。
その後の流摩は商船会社に入社し、貿易と造船技術に関する知識習得に没頭していた。
また、国政と国際状況の事情を把握するためひたすら要人との接触に奔走し勉学に励んでいた。
持前の好奇心と探究心が速度を回転させ、自国の在り方に疑問を抱き始めていた。
この当時、若干17歳の時であった。されど、天才と謳われた流摩の脳は既に開花しておりわずか1年にて経済を知り尽くし、知人の手助けもあり勤めを辞して己の会社を立ち上げたのであった。
その名は、「開国社」。既にこの当時から流摩の脳裏には謀があったのであろう。流摩の評判は、日に日に大きくなり頭脳明晰、直感型で何事にも判断が素早く、小事に捉われず大きな視野で物事を判断し大事を見抜く器量を持ち合わせていた。
上京して2年。流摩は19歳となっていた。己が立ち上げた貿易会社は順調に収益を上げ、海外との交易も盛んに行い収益のみならず、情報収集に躍起になっていた。
ある日ふらりと横浜に立ち寄った時の出来事である。
アジア人が欧米人の奴隷のような振る舞いに逢っていても、ぺこぺこと頭を下げるのみのアジア人の姿に心を痛め、怒りを覚えたのであった。欧米列強が植民地化した国々から連れてこられたアジア人の姿と、自国の日本人の卑屈な態度に流摩は、憤然たる決意を固めたのであった。日本国内にも関わらず、商人も農民も中国人もタイ人も皆、欧米人にこき使われている。また、悲惨なのは婦人に関しては娼婦の如く扱われ路上での猥褻な行為は白昼でも堂々と行われていたのである。
当然、この地にも行政の役人や警察組織は存在していたが、欧米人の巧みな接待に翻弄させられ、買いなされていたので、全てを見逃していたのである。この事が最も流摩の怒りを買い、この国の現状に後がないことを察知させたのであった。
感情に惑わされぬ流摩は、急ぎ東京の自宅のある麻布に戻り、開国社の主力メンバーと行政に携わる知人や仲間を召集し、己の決意を語ることとなった。
流摩 「今日のアジアおよび我が国、
日本は欧米列強に蝕まれ続けている。
既に、日本以外のアジア諸国は完全に植民地化し、
我が国も時間の問題である。」
「昨日、横浜に出向いてきた!その帰り道の電車の中で
決意したことを一同に物申す。」
「我が坂本流摩は、本日より開国社を解散し、
『アジア解放隊』を結成する。」
「異論あるものと賛同できない者は、
即刻申し出てこの場を退散せよ!」
流摩が初めて感情的に発した言葉であった。
一人大きな声を張り上げて、自分の意思を告げた
流摩は既に覚悟を決めていた。
今後、己に襲いかかるであろう困難と
血みどろの戦いが訪れることを。
世界を相手に島国一国の、それも、
一結社程度で戦いを挑むことに……。
【行動開始】
突然の流摩の宣誓に驚いた様子もなく、一同からはだれ一人の離脱者も出ず前身の開国社からの流摩の片腕だった隊員がそれぞれ流摩の指示に従い役割を担い行動に出た。片腕の一人、山本悟は、全国にちらばる自分の同士に連絡を取り事の成り行きを説明し連絡網を整備する。
と、同時にアジア諸国との連絡網を整備する担い手となる。また、東郷西成は、国家治安部隊の総帥である中原中将とその夜に会談を実行し協力関係を強化する。さらに、白川白水は、急ぎ大阪に奔り大阪商人の大富豪を一同に収集し事の説明をした直ぐさまに軍資金調達の確約を取り付けた。そして、流摩本人は己の最大の支援者である時の首相、大杉栄達に面会し自分の行動計画を一方的に告げその場を立ち去る。
流摩が大杉に告げた言葉は、次の言葉だけであった。
流摩 「時間の問題です。」
「1年も持たないでしょう。」
「この半年で事を起こし命を賭けてこの国の独立を保ち、
アジア諸国の独立の支援をしない限りこの国も
アジア諸国は未来永劫、欧米諸国の植民地として歴史を
刻むこととなるでしょう。
大杉首相。今しかない。いや、これが最初で
最後のチャンスかもしれない。」
次回へ つづく
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